エッセイ(13)『木を知り、森を制す?』
「木を見て森を見ず」ということわざ、聞き飽きるほど耳にしますよね。
細かい部分ばかりに気を取られて、全体を見失うな——という戒めとしてよく使われます。
でも、ちょっと視点を変えてみるとどうでしょう?
「森を本当に理解したいなら、まず一本一本の木をじっくり見てみよう」 という考え方もできるのでは?
たとえば、業界の大きなトレンドを掴みたいとき、あなたならどうしますか?
つい、有名な専門家の話や大手企業の発表をチェックしてしまいがちですよね。
もちろん、それも重要な情報ですが、実際に市場の流れを作っているのは、現場の一つひとつの動き、つまり「木」そのものです。
トップダウンの情報ばかりを追いかけていると、「何か違和感があるな・・・」と感じることはありませんか?
ある商品の需要を調査していたとき、市場の最前線から予想とは大きく異なる反応が出てきた ことがありました。
経営層が見ていた「森」の姿と、現場が感じていた「木」の実態がズレていたのです。
そこで、現場の声に耳を傾けながらデータを分析すると、業界全体を左右する新たな動き が見えてきました。
こうして「小さな動き」に目を向けることで、はじめて本当の「森の姿」が明らかになったこともありました。
『「木」と「森」を行ったり来たりする視点』
「森を見て木を見ず」になってもいけないし、「木を見て森を見ず」になってもいけない。
大事なのは、この 「木」と「森」を行ったり来たりする視点」 を持つこと。
一本一本の木を観察し、その配置や成長の仕方を理解することで、はじめて「この森がどんなふうに変化しているのか」が見えてきます。
つまり、細部にこだわりつつ、大局を見失わないこと。
「木を知ることが、森全体のダイナミズムを読み解く鍵」 になるのです。
どこにどんな木が生えているのか?
その葉の色や形はどうなっているのか?
一本一本を丁寧に観察しながら、必要な情報を見逃さないこと。
その上で、大きな視野を持ち、森全体を俯瞰する・・・。
そうすれば、これまで見えていなかったものが、きっと浮かび上がってくるはずです。