エッセイ(19)『一人の力を侮るな?』
大きな企業では、「一人の力なんてちっぽけなものだ」と思われがちです。
社員が何百人、何千人もいる中で、たった一人が頑張ったところで会社が大きく変わるわけではない…、そう感じるのも無理はありません。
でも、もしその「一人」が会社の社長だったら?
あるいは、重要な事業部門の責任者だったらどうでしょう?
そう、話はまったく変わってきますよね。
大きな組織であっても、特定の一人の行動や考え方が全体を動かす力になることがあるのです。
『赤字を黒字に変えた一人の責任者』
ある企業が海外で苦戦している事業を抱えていました。
赤字が続き、改善の兆しも見えない状況。
そこで送り込まれたのが、現地責任者として選ばれた一人の人物でした。
するとどうでしょう?
人員も増やしていない、営業拠点の数も変わらない、営業車両だって同じ台数。
にもかかわらず、業績は改善し始め、ついには黒字を達成したのです。
この成功要因は何だったのでしょうか?
そうです、それは現地責任者の存在そのものです。
彼が持つリーダーシップ、判断力、そして現場でのアプローチが、あるいは情熱が組織全体を動かしたのです。
『営業所を救った“受付の声” 』
では、責任者でないと買えられないのかということで、もう一つ、こんな話があります。
ある営業会社の一つの営業所が、低迷した成績に悩んでいました。
成績不振を理由に所長が社員を責める日々。
社員たちは萎縮し、やる気を失い、退職者も増えてしまいます。
社内には暗い空気が漂い、出口の見えない状況でした。
そんな中、配属されたのが電話受付係のある女性社員です。
彼女は、いつも明るい声で電話を取り、顧客対応を行いました。
その声はたちまち評判になり、顧客の信頼が増していきます。
その明るさは次第に社内にも波及し、社員たちの士気が向上。
雰囲気が良くなるとともに注文も増え、最終的には営業所の成績が急上昇。
なんと、会社で一番の営業所にまで成長したのです。
この成功要因も、営業所の責任者でもない、たった一人の明るい受付係の存在でした。
『「たった一人」だからこそ』
これらの例が示しているのは、一人の人間が持つ計り知れない力です。
それが地位のあるリーダーであろうがなかろうが、大きな組織の中でも、状況を変えるカギを握っているのは、実は「たった一人」の力であることが少なくありません。
そして、その「たった一人」になる可能性を秘めているのは、あなたです。
どうか、自分自身の力を侮らず、周りに与えられるポジティブな影響を信じてみてください。
あなたが組織を変える次の主人公になる日が、きっと訪れるはずです。
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