エッセイ(11)『帰り際に出た本音!』
マーケティングリサーチの世界で「グループインタビュー(グルイン)」は、定性調査の王道。
クライアントから依頼があると、「よし、真剣勝負の時間だ!」と気合いが入るものです。
5~6人の参加者を集めて、テーマに沿って意見を交わしてもらう。
一見シンプルに聞こえますが、これがなかなか“クセ者”なんです。
司会者が話をリードし、質問を投げかけ、議論をコントロールしていく。
参加者が「そうそう、私も!」と共感したり、「いや、それは違う」と異論を唱えたりする。
そのやりとりの中にこそ、貴重なインサイトが眠っているわけです。
『グルインは“多数決”じゃない!』
ただし、やり方を間違えると大変なことに。
特にありがちなNGパターンが、「結果を数で判断してしまう」。
「30人中20人が“買う”って言いました!これで決まりですね!」
・・・ちょっと待った!
グルインはアンケートではないんです。
大事なのは「数」ではなく、「なぜそう思うのか?」という背景。
参加者がどんな価値観を持っているのか?
その意見の裏には、どんな体験や感情があるのか?
そこを深掘りすることこそが、グルインの醍醐味なのです。
帰り際にこぼれた“本音”
さて、そんな深掘りを重ね、2時間近くのグルインが終了。
「よし、いい調査ができた!」とホッとしたその瞬間でした。
参加者に謝礼を渡してお見送りしていると、一人の女性がバツの悪そうな顔でそっと私に耳打ちしてきました。
「実は…さっき、つい“環境に配慮した商品を選ぶ”って言っちゃったんですけど…」
えっ?まさかの「後出し本音」!?
驚いて聞き返すと、彼女は続けました。
「本当は、環境よりも値段で決めてるんです。恥ずかしいんですけど・・・、安いのが一番なんです。」
『グルインの“罠”とは?』
この瞬間、私は改めて「グルインの罠」を実感しました。
人前では、つい見栄を張ったり、周囲に合わせてしまったりするもの。
特に「良い人」と思われたい場面では、社会的に望ましい答えを選びがちです。
だからこそ、グルインの結果をそのまま鵜呑みにするのは危険!
発言の裏に隠された「本音」をどう引き出すか。
それがリサーチャーの腕の見せどころなんです。
とはいえ、どんなにしっかり進行しても、最後の最後に「いや、実はね…」なんて言われることもある(笑)。
だからこそ、グルインは奥深くて面白い!
さあ、次の調査では「帰り際の本音」にも、しっかり耳を澄ませてみませんか?